中小企業診断士が考える借入金額の目安

長引くコロナ禍において借入額が増加

2020年1月頃より始まったパンデミック、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、「3年間無金利貸付」などの支援制度もあり、多くの企業で借入金が増加していっているのが現状です。

この2021年4〜5月に始まった「第4波」での緊急事態宣言、並びに時短・休業命令は、多くの中小企業にとって甚大な打撃となっており、対象企業にとっても裾野企業にとっても、たいへん厳しい資金繰り状況になっております。

私は中小企業診断士として、多くの企業再生計画策定、経営改善計画策定に関わってまいりました。

そこでの経験を踏まえ、いったい企業における借入金額の限度額はいくらなのか、を考えてみたいと思います。

借入限度額の目安は、経営状況に依る

借入金の返済原資は、原則として、

税引後当期利益+減価償却費

になります。

つまり、「税引後当期利益+減価償却費」で何年かけて返済できるか、ということで、借入限度額の目安が決まります。

例えば、返済期間10年の借入であれば、

(税引後当期利益+減価償却費)×10年

が返済可能かどうか、で目安が決まります。

毎年の税引後当期利益が10,000千円、減価償却費が5,000千円、返済期間10年であれば、

(10,000千円+5,000千円)×10年=150,000千円

が借入限度額の目安となります。

一般論としての目安は「売上高の3ヶ月分〜半年分」と言われるが

私は一般論として、「売上高の3ヶ月分〜半年分が借入限度額の目安」と言っています。

例えば、売上高が1億円とすると、30,000千円〜50,000千円が借入限度額の目安です。

この場合、10年返済契約の場合、年間の「税引後当期利益+減価償却費」=3,000千円〜5,000千円が必要ですので、減価償却費が0円の場合であれば、税引後当期利益率3〜5%以上を実現している前提での一般論となります。

利益率が低い企業であったり、「税引後当期利益+減価償却費」が低い企業、売上高に毎年大きな変動があるような企業においては、この一般論を用いると、経営を誤る可能性が高まりますので、細心の注意を払う必要があります。

長引くパンデミックの中での借入限度額の目安は?

ただ、今回のコロナ禍のような状況で、「念のために資金を確保しておきたい」などの場合には、借入金額は、売上高の半年分を超えてもよいと考えます。

経営者、起業家の「心の拠り所とする」「安心を買う」ための借入は必要であると考えます。

ただし、あくまで「念のための確保」「念のための借入」であり、借り入れた資金を使用する際には細心の注意を払う必要があります。

・売掛金が入金したらすぐに口座に資金を戻す
・「資産売却」「役員報酬他経費削減」などとセットで資金を使う

など、細心の注意が必要です。

デットファイナンス経営が隆盛の中でも、しっかりとした事業計画を

ソフトバンクの経営モデルに代表される、デットファイナンス(Debt Finance、借入による資金調達)経営を目指す経営者、起業家を多くお見受けします。私も、起業家の1人として、それを否定することはありません。

ただ、借りたお金は必ず返済しなければなりません。

事業計画をしっかりと練って、想定される経営リスクと向き合いながら、「税引後当期利益+減価償却費」の将来計画を明確化して、経営に望んでいく必要があります。